Pat Metheny “TAP”   liner notes  

 

WPCR-15065

パット×ジョンによる新たな化学反応 

  パット・メセニーの、演奏家としての凄さに圧倒された新作「タップ」である。

今作は、ジョン・ゾーンの『ブック・オブ・エンジェルズ』シリーズの第20作にあたる。

つまり、ジョンの作曲を (ジョン自身のクインテットなどを含む) 様々な演奏家がアルバム化する企画の一作品で、

パットが所属するノンサッチと、ジョンのレーベルであるTzadikより同時発売される。

パットが自分以外の作曲家の作品集を発表するのは初めてであり、

パットとジョンが起こす化学反応と、その爆発を楽しめる作品なのだ。

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 パット・メセニー (1954生まれ) とジョン・ゾーン (1953年生まれ) は、同時代にアメリカに生まれ、

同じく広義の“ジャズ”をフィールドとして活躍してきたのに、近年になるまでほとんど接触がなかった。

 ジョンの音楽の原風景は、私見だが、ダビデ王に遡る“イスラエル王国”だ。

ビバップのイディオムを消化した上で、フリー・スタイルの演奏を基盤とするアヴァンギャルドな音楽活動は、

驚くほど多岐にわたる。ユダヤ系である自身のルーツ・ミュージックであるクレズマー音楽を追求し、

その影響をちりばめた『ブック・オブ・エンジェルズ』シリーズを推し進めるなど、

独自の音楽世界を開示してきた。

 かたや、パットの音楽の原風景は“アメリカ中西部”で、アルバムのほとんどがグラミー賞を受賞するという、

実力に人気が伴う、ジャズの表通りを歩いてきた音楽家だ。

 このように、パットとジョンの活動は、一見対極にあるようにみえるが、

ともに一徹なまでに自身の音楽に忠実であり、そろってオーネット・コールマンとの共演作があり、

フリー・フォームのジャズへのリスペクトをもっている。

オーネットに続く革新的な作曲家は誰かと考えたとき、ジョン・ゾーンの名前がでてくるのは自明の理だともいえるのである。

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まだリリースしてから日が経っていないので、

この先は、CDについているライナーノーツをお読みください。

いつか必ず、公開します。