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第56回 グラミー賞受賞を祝って、ライナーノーツの冒頭を公開します。

Pat Methny   “UNITY BAND” liner notes

 

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パットが求める音楽的結束・調和のスタンダード

   パット・メセニーの新作では、ジャズおよび音楽ファンの予想を超えるプランが打ち出されるのが常といっていいだろう。

その顕著な例が、前代未聞の、自動演奏システムとの共演という『オーケストリン』(2010年)だ。

 しかし、当の『オ—ケストリオン』、ソロ・ギターによる初めてのポップス集『ホワッツ・イット・オール・アバウト』(2011年)と、

ある種一人で制作したアルバムが続いたことで、今回ばかりは “グループ”に回帰するであろうとの予測はあった。

  そろそろバンドを組み、メンバーとの応酬を楽しみたいはずだし、もともとパットは、

ギタリストとして共演者の音に反応することを好むタイプでもあるからだ。

トリオでは2008年、クァルテットでの最後のレコーディングは、

ブランド・メルドー・トリオと組んだ2006年録音だということをかんがみれば、なおさらだ。

 実際、本作『ユニティ・バンド』はクァルテット作になった。けれど、そこはパットのこと。

しっかりと筆者の予測を超え、テナー・サックスをフロントに迎えている。

 パット名義のテナー・サックスとの共演作としては、『80/81』以来、実に30余年ぶりのアルバムということになる。

まず、このことをパットに聞かなければならない。

しかし、パットは、いつものように理路整然と語った。

 

「『80/81』は、ぼくが初めてジャズ本来の編成で臨んだアルバムと思わがちだけれど、

実際はデビュー前の十代にがっちりやっていた、なじみの深いフォーマットなんだ。

そう、ぼくは12歳のときに音楽の仕事で初ギャラをもらい、

14歳のときには週5日は仕事をしていた。

で、ECMの『80/81』には、デューイ・レッドマンとマイケル・ブレッカーという

2人の偉大なテナー奏者に参加してもらった。

ぼく名義では、ほかにオーネット・コールマンとやらせてもらった『ソングX』があるが、

こちらは特別プロジェクトだと考えている。

 

マイク(・ブレッカー)とは、その後5回もレコーディングし、遺作ではコ・プロデュースもつとめた。

『80/81』バンドのリユニオンをしたいねという話はでるんだが、

既にデューイとマイクは鬼籍に入り、依頼しようがない。

それからも、多くのサックス奏者と共演してきたな。

ケニー・ギャレット、デイヴ・リーブマン、ゲイリー・トーマス、デヴィッド・サンチェス、ドナルド・ハリソン。

 

ただ、自分のプロジェクト、ぼくの曲となると、これだというサックス奏者が思い当たらなかった。

やりたいことが山積し、それを片っ端からやっていたら、サックスとの共演が遅れたというのが、最も大きな要因だけどね」

電話の向こうの笑い声が、本作への満足を伝えてきた。

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パットは、本作のサックス奏者として、クリス・ポッターを起用した要因を3つあげた。

その人選に意外な思いをもった筆者は、幾人かの名前をだし、ほかの奏者ではダメだった理由、

どうしてもクリスにしたかった理由を訊いた。

 

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2014年現在としては、ここまでですが、いつか全文UPします。

掲載することへのパット自身の励まし、ワーナーミュージックのご理解に感謝しています。