Home » アーカイヴス (新聞、雑誌) » 毎日新聞、渡辺貞夫 2014.01.16掲載

毎日新聞 1月16日 夕刊(関東版) らっこ掲載

 さらなる成長目指して

 渡辺貞夫が、2月1日に81歳を迎える。

サキソフォン奏者/作曲家として、現在もワールドワイドに第一線で活躍を続けているその姿に、

多くの人々が励まされている。

ライヴを見た観客は、「貞夫さんがあれほど元気に素晴らしい演奏をするのだから、自分もがんばろうと思った」

と口を揃える。

 筆者自身は、昨年暮れの『クリスマス・ギフト〜ビバップ・ザ・ナイト』での、

ニコラス・ペイトン(tp)との2管による演奏のすばらしさに脱帽した。

ジャズの故郷であるニューオーリンズ出身のペイトンは40歳になって脂が乗り切り、

大きな音量と超絶技巧を駆使して、これでもかと典型的なビバップを披露した。

これに対し、渡辺は互角の高速スピードでユニゾンを繰り出し、

自らのソロでは瑞々しい音色で“渡辺貞夫のビバップ”を演奏したのだ。

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 渡辺の場合、この“渡辺貞夫にしかできない音楽”をやれるのが何よりの強みであり、魅力である。

来たる2月6日、7日には久しぶりに自身のビッグバンドを結成して『STB139』の舞台に立つが、

これもまた、きっとオリジナリティあふれるサウンドになることだろう。

 渡辺は、バークレー音楽院留学時代から書き溜めたビッグバンド・アレンジを多数もっており、

20年前(と17年前)にもビッグバンド演奏を披露したことがある。

そのとき、アレンジほかで尽力したのがトロンボーン奏者、村田陽一であり、

その他の参加メンバーは、現在では日本のジャズ界で中核になって活躍している。

 渡辺が語った。

「ビッグバンドでは、コンダクトを兼ねてしまうと、なかなか自分の演奏ができません。

今回は、サキソフォンに集中したいので、村田くんにアレンジやコンサート・マスターをお願いす

ることにしました。1回の公演のためだけではなく、時間をかけて一緒に成長していきたいと思っています」

 直近では、渡辺が招聘教授をつとめる国立音楽大学の、ニュータイドジャズオーケストラとの共演を数回聴いたが、

ビッグバンドの華やかさとダイナミクスが、太陽のようなサダオ・ミュージックには、実にぴったりとくる。

  そして、書き尽くされてきたことだが、渡辺と演奏したミュージシャンは後に必ず上手くなる。

それは、きっと彼が全身でスウィングと、音楽を楽しむ姿勢を伝えるからなのだと思う。

 今回のビッグバンドは、30歳代の気鋭の管楽器奏者を核に、自身のグループから起用したリズム・セクションからなる。

この17名による『SADAO WATANABE ORCHESTRA』が、渡辺の音楽がもつ明るさを増幅し、

大きなエネルギーとソングの楽しさを届けてくれると確信している。

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