Music Diary
[ 2009.03.19 ]
メロディ・ガルドーの第2弾がグッとくる
シングル・マザーだった母親が、彼女に「メロディ」という名前をつけたことからして、偶然ではなかったのかもしれないません。メロディ・ガルドー。彼女の歌を聴けば、きっと、忘れられない名になるはずです。
前作にあたるデビュー・アルバム『Worrisome Heart』は、メロディ自身の「交通事故からの奇跡的生還ストーリー」とともに、内容でもジャズとブルースへの愛を感じさせて、なかなかすてきなアルバムでした。
メロディには、シンガー・ソングライターとして語りたい物語が山ほどありましたし、痛みを内包した、やさしいビブラートをもつ歌声がありました。それが、何よりの味方になったのだと感じています。
彼女の第2作は、ラリー・クライン・プロデュースでいくということは、レコード会社サイドではかなり早くに決められていました。ラリーの起用は「ジョニ・ミチェルの昔のプロデューサー」という呼称を超え、今現在のプロデュース力に評価が高まっているからです。バックグラウンドのちがいはあっても、歌の色調にかなりの類似点があるマデリン・ペルーをプロデュースした成功もあり、「陰影のあるサウンドを作らせたらNo.1」という定評を、彼が獲得していたからでした。
しかし、今作のレコーディングに、通常の何倍もの努力と時間がかけられたことは言うまでもありません。
メロディが言っていました。
「いくらでもスポーツ・カーがあるのに、わたしは週末だけに走れるおんぼろ車のようなもの(笑)。それでもいいって、言ってくれるスタッフがいるなんて、わたしは何て幸運なのでしょう」。
そう、彼女の場合、休み休みでないとハンディがあるので仕事ができませんし、集中力を保つのだって、健常者には想像できない、たいへんさがあるのです。
ツアーの合間をぬってレコーディングされた本作には、「アルバムでもライブで体験した一体感を表したい」というメロディの強い要望により、ツアー・メンバーの参加が決定しました。
そしてストリングスに、鬼才、ヴィンス・メンドーザが起用され、メロディのサウンドに壮大、かつ繊細な彩りがそえられることになったのです。
ここでのメロディの歌は、実にしみます。シンガー・ソングライターとして、いい歌を書くようになりました。
冒頭の〈ベイビー・アイム・ア・フール〉での、語りかけるような歌唱、抑えた表現と「間」が、涙がでそうになるほどの深い情感を伝えてきます。
ボサノヴァ調での〈イフ・ザ・スターズ・ワー・マイン〉も、メロディの歌は可憐なだけではなく、夢と現実との断層をうめるように響きます。
ブルース魂がこもった〈コンフォート・ミー〉、パトリック・ヒュースのミュート・トランペットやラリー・ゴールディングスのオルガンがきいた、悲しみ色の〈ユア・ハート・イズ・ブラック・アズ・ナイト〉。
仏語での〈秘密の恋人〉もすばらしく、それが流れ星を歌えば、つづく〈アワ・ラヴ・イズ・イージー〉は雨の夜の2人を切々と歌う。
タイトル曲〈マイ・オンリー・スリル〉の哀愁も、ストリングスと相まって、美しく深いのです。
スタンダードの〈オーヴァー・ザ・レインボウ〉も、彼女流のブラジル調アレンジ。母親が仕事にでている間に、祖母さんと何度も見た、映画「オズの魔法使い」の思い出が生んだ、名テイクです。
日本盤のみのボーナス・トラック〈プリテンド・アイ・ドント・イグジスト〉では、メロディ自身のギターが素朴に、彼女の「存在しない振り」を引き立てていると思いませんか。
実はメロディ・ガルドーは、2月にプロモ来日する予定だったのですが、直前にまたしても交通事故に遭い、延期になりました。前の交通事故がトラウマになっているはずですから、大事をとっての短期入院だったと、わたしは理解しています。
4月には、今度こそ来日することになり、ショーケースもありますし(招待のみ)、わたしはインタヴューの約束もしました。
会うのが、とても楽しみです。その模様は、新しく立ち上げる個人サイトでリポートしますね。(URLは、追ってお知らせします。)お楽しみに。
ハンディを背負っての音楽活動はたいへんでしょうが、以前の事故の際、療養の過程で受けた音楽療法で、曲を作ることを覚えたメロディ・ガルドーです。
無理をせず、元気で永く歌い続けてほしい。それが、今作『マイ・オンリー・スリル』でメロディの歌に大きな共感をもつ、すべての聴き手の願いだと思っています。

メロディ・ガルドー
『My One And Only Thrill』
ユニバーサルミュージック
UCCU-1186
2009年4月8日発売予定
※ 権利者の許可を得ずに、複製することを禁じます。







