Music Diary
[ 2010.03.31 ]
チューチョ・バルデス x ミシェル・カミロ
キューバ出身のチューチョ・バルデスと、ドミニカを代表するミシェル・カミロ。
超絶技巧で知られる、この2人のピアニストの共演が日本で実現したのですから、ブルーノート東京は連日超満員になりました。
リピーターが増えますから、正確にいえば、クレッシェンドで聴衆が増えたのです。
ラテン・ジャズというと、安易に躍動の側面だけをとらえてしまいがちですが、
そればかりじゃない、ラテンならではの深いリリシズムを聴ける貴重な機会になりました。
ミシェルが次のように語りました。
「チューチョとデュオでヨーロッパ・ツアーをしたのは1991年のこと。
各国で好評を得ましたが、私自身これほどピアノを弾く喜びに包まれた経験もなかったんです。
日本では今回が初演です。私たちは、どちらかがリードするということはありません。
ボスは、常に音楽そのものなのです」
わ、いいこと言うわ。
対等な立場での2ピアノ、そこにあるのは音楽への献身のみ。
〈ベサメ・ムーチョ〉では非常にスローなテンポで恋心の切なさを表現し、
〈アイ・ゴット・リズム〉では超高速のストライド・ピアノで掛けあい、ピアノが打楽器にもなることを照明してみせました。
わたしはあまりの楽しさに、今回は2夜通ってしまいましたが、最終日の29日には2人の息は更にあっていたのです。
息はぴったりでしたが、2人の場合、それは音が揃っていることを意味しません。
演奏の絶妙なずれが官能を生むことを、2人は(本能的に)熟知した上で演奏しているのです。
あわせるのは学べますが、このずらしを習得するのは至難でしょうね。
マイルス・デイビスの〈ソーラー〉は、あえてラテン色を排除してブルースで。
チューチョのソロ曲は、毎夜変わったようですが、わたしが観た〈虹の彼方に〉にはドビュッシーの「アラベスク第1番」がモチーフとして登場。
チューチョの澄みきった音色をいかし、粒がそろったトリルを多用した壮大な即興曲に仕上げたのです。圧倒的!
武見由美子さんはクラシックのピアニストですが
「まるでオーケストラのようね〜」と驚嘆していました。
1時間休むことなく弾いた後、チューチョ・バルデスのグループが参加します。
妹さんの、ブエナビスタ・ソシアル・クラブを彷彿させる、張りのある歌声。
立体的なラテンのリズムが加わっての、超高速で演奏する〈アイ・リメンバー・エイプリル〉に客席も拍手かっさいです。
音をしきつめても広大な空間を感じさせ、
音と音の間にも豊かなエモーションをこめる技は、カリブ海を見て育ったピアニストにしかできないのではないでしょうか。
外は風もあって、たいへんな寒さ。
その寒さを忘れ、聴くだけで額に汗した夜になったのでした。







