Music Diary
[ 2010.06.11 ]
パット・メセニー「オーケストリオン」を見て
いやぁ、予想以上にすごかったです、
パット・メセニーの「オーケストリオン」公演@すみだトリフォニーホール。
11日(金)が東京の初日でしたが、パットが登場するや、それだけで会場から割れんばかりの拍手が起こりました。
パットは、最初はアコギで始め、〈ミヌワノ〉そして〈レター・フロム・ホーム〉〈ジェイムス〉といったヒットを即興でつないだメドレーを演奏しました。
静謐といっても過言ではない、ギターのたたずまい。
続いてバリトン・ギターの深い音色で、新曲を披露。
3曲目に自身が開発に携わったピカソ・ギターに持ち替えて、エキゾチックな音色をいかした〈サウンド・オブ・ウォーター〉をかなでます。
と、ここまでオーケストリオンなしで進めているのです。嵐の前の静けさとはいえ、実に静かです。
なぜか、と考えたとき、もちろん徐々にもりあげるという演出上のプランもあるでしょうが、「ギター1本でも、ここまでできる。ピカソ・ギターの製作にも携わってきた」というところを最初に見せておくのだなと思いました。
ギター1本でもお聴かせできますよ、という自負がなければ、オーケストリンも意味をなさないからです。
◆ ◆ ◆
4曲目、エレクトリックをもち、『ブライト・サイズ・ライフ』から〈ユニティ・ヴィレッジ〉を演奏。
パットいわく、「初めて多重録音をしたアルバムだし、当時のオーヴァーダヴィングはたいへんだったから、今それを思い出しながら演奏するのもいいと思ってね」。
ここで初めてオーケストリオンが、シンバルのみで控えめに登場してくるのです。
それが終わると舞台後方を覆っていた布が落とされ、現れました、オーケストリオンの全貌が!
観客は、一斉に拍手。
パットも、ミュージシャンを紹介するように、楽器群に手をさしのべます。
さぁ、ここからが共演のはじまり、はじまり。
〈オーケストリオン組曲〉の演奏です。
音の重層的な重なり。
ベース、ドラムス、コンガにボンゴ。
マリンバやヴィブラフォンの音が、サウンドに色彩をもたらします。ベースがうねる、シンバルが踊る。
主旋律をオーケストリオンが演奏することもあり、パットがそれに反応します。
パットがどう指令をだしているのかは、見ていてもまったくわかりません。
しかし、鳴る音が光るので、視覚的に楽しくもあるのです。
その真ん中でギターをかかえた男は、おもちゃをつくりあげた少年か、錬金術師かw
いや、目の前にいるのは「オーケストレーションの野望に燃えた一人の音楽家」でした。
究極の一人プレイ。
ずべての楽器は元来パットがプレイしていますから、わたしたち聴衆は、パットの真っ裸をみているようなものなのです。
パットだって、自分自身の分身オーケストラに囲まれている感覚は、いい気分なのにちがいありません。
ギターだと上手すぎて見えないパットの内面を、オーケストリオンが(いやでも)語ります。
また曲が進むにつれて、演奏が重層的になるので、ミルフィーユのようなエクスタシーがそこに出現するのです。
重なりあうエクスタシー。
もちろん、相手は機械ですから、曲の終わり方にいつものような情緒はありません。
でも、やはり、いいんです。
視覚と聴覚が手をたずさえて、どんどんもりあがってしまうのです。
組曲は〈ソウル・サーチ〉というバラードで幕を閉じました。
◆ ◆ ◆
ここからがまたパットらしいのですが、この自動演奏システムのことを伝えるべく、解説もするのです。
わかりやすい曲も演奏して、種明かしもするのです。
それでも、わからないのですけれどね。
ソレノイドで各楽器にくくりつけたマレットが上下する、足でソレノイドを操作し、手の動きとの連動のなかで即興をしていく、のだそうですがw
めずらしくステージ上でも饒舌で、次のように話しました。
「いつもコンサートに来てくださり、どうもありがとう。
特に今回は、何がででくるか、明確にはわからないなか来場してくださったのですから、感謝しています。
ぼくは、日本の聴衆の、いい耳にサポートしてきたいただいたという実感がある。
皆さんの、そのいい耳をしても、オーケストリンのしくみはわからないかもしれません」
解ってもらおうと、オーネット・コールマンと共演した『ソングX 』からのナンバーをモチーフに使って演奏。解る、解らないを超えて、いつもは聴けない曲が聴けたのも面白かった。
繰り返されるアンコール。
スタンディング・オベーションに応えて、パットは演奏を止めようとしませんでした。
終演後、パットに聴きました。
「もうすぐツアーが終わりで、さみしいんでしょう?」
「イヤ(きっぱり)」
「?」
「10月に20公演、追加になったんだ。小さなことばかりなんだけど、帰ったら、改良したい点がいろいろあって。早く、いじりたい」
「こういったビッグ・サプライズを、あと10個くらい考えてるんじゃないの?」
ま、お世辞ではありませんが、ねぎらってそんなことをいってみたら、パットは瞳に炎を燃やしていったのです。
「いや、こういうアイデアが200くらいあるんだ。それを、一つひとつやりとげていくよ!!!」







