Music Diary
[ 2008.04.25 ]
マドンナの進化を「ハード・キャンディ」に聴く
マドンナの動きが熱い、この春。
3月に念願の「ロックの殿堂入り」を果たし、4月30日には新作「ハード・キャンディ」がリリースされます。
5月には第61回カンヌ映画祭においてエイズ・チャリティ・イベントに参加することが決定。新作映画「I am Because We are」と題された、アフリカでも最も貧困な国といわれるマウライで、エイズによって親を奪われた子供たちを描いたドキュメンタリーも公開される予定です。
マウライから養子をもらったことで、マスコミを賑わせた彼女ですが、世間の風評をものともせず、その行動は「まっしぐら」です。マウライに遺児保護施設を設立したほどの、熱の入れようです。すごい行動力ですね。
マドンナは語っています。
「スピリチュアリティを通じてしか、世界は救済できないと思う。なぜって、戦争をしていない状態が平和なのではなく、平和って、もっと心に根ざした、深い心理体験だから」
このところのマドンナの活動を見ていると、彼女の悲願である、「スピリチュアリティを通じての世界救済」へと歩を進めつつあるという印象をもつのです。
さて、今日はその新作「ハード・キャンディ」について書きましょう。タイトルからして意味深ですが(「どこが?」と聞いたあなた、自分で考えてね)、今作もダンス・テューンで統一された作風。
ただ前作と異なるのは、ティンバランドやネプチューンズらのプロデュースを得、重層的なサウンドを完成させたことです。前作ではノン・ストップが売りのひとつでしたが、今作では、更に一歩進め、凝ったフェイド・アウトを使って曲をつないでいます。
たぶん、この「ハード・キャンディ」は、音楽誌などではヒップ・ホップ・アルバムという呼ばれ方をするでしょう。でも、既存のヒップ・ホップを超えているのは、男声による語りやヴォーカルを、相手役や演劇の台本のト書きに見立て、メロディを歌うマドンナとの対比で、歌のストーリーをも重層化している点です。
歌のなかで、ノリと突っ込みが機能しているわけです。あるいは、オペラのように何人かの登場人物が、それぞれの意見や感情を歌っていると思ってもらってもいいですね。
オーケストラルなパーカッション群の響きが、その歌のストーリーの見事な引き立て役になり、迫力を生んでいきます。聴き手であるわたくしたちは、幾層ものミルフィーユ的サウンドに包まれた感覚にとらわれるでしょう。耳で聴くというより、音楽のなかを泳いでいく感覚、でしょうか。身体全体で聴くように、サウンド/音楽が構成されている。これも、ほめたいところです。
最先端にいる気鋭たちを集めて制作されたアルバムでも、有機的な音がする。それも、マドンナが心を傾けた点でしたし、全13曲のすべてに彼女自身が作詞・作曲に加わり、自身の「声」を届けようと心を砕いたことも、アルバム成功の要因のひとつです。
たとえば、スパニッシュ・テイストの〈スパニッシュ・レッスン〉では、通常手拍子が使われるところを、打ち込み風の連打音を採用することで、サウンドを21世紀的にしています。
スペイシーなシンセサイザーをバックに歌う〈ビート・ゴーズ・オン〉では、「あなたの考えることが現実化される」といった歌詞で、スピリチュアル・リーダーとしての世界ポジティヴ化発言もなされています。
ギターでスタートする〈マイルス・アウェイ〉は、自分を捨てていった男に「あなたが次に私に会うときは、もう別の私よ」と歌います。このナンバーは、木村拓哉主演の月9ドラマ「CHANGE」の主題歌にも使われています。(TVはまだ見ていないけれど、今度見てみます。キムタクを見ると、次の日の肌の調子がよくなりますから)
歌詞とジャケットを見ていると、セックスが題材のように思える今作。ほとんどそれで間違いはないのですが、マドンナはそこに「Save the World」といったメッセージをはさみこみ、世界救済への祈りをこめているのです。
セックスと世界救済を、どうして同じ地平で歌えるのだろうと、わたくしは一瞬考え込みましたが、それがマドンナの手法であり、それがマドンナなのでしょう。
それに、彼女なら、たぶん「平和じゃなかったら、セックスしようって気分にもならないわよ」(仮想)なんて、答えるのではないでしょうか。
ポップス界の女王である彼女にしかできない力技に、「お見事!」と声をかけた、ハードなキャンディでした。

マドンナ『ハード・キャンディ』
ワーナーミュージックジャパン
WPCR12880
2008年04月30日発売
※ 権利者の許可を得ずに、複製することを禁じます。
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最新NEWS
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マドンナが、4月30日にNYで行ったアルバム・リリース記念ライヴが、日本独占放送されるそうです。
タイトルは、
「MADONNA Live from Roseland Ballroom New York」。(CS放送フジテレビ721)
日時は、7月12日(土)22:00〜23:00に放送されます。楽しみ。
Photo credit: Steven Klein
Styling credits: Gina Brooke using Shu Uemura and Andy Lecompte of SOLO Artists







